cho-kai-san811のブログ

連れ合いを失った老人のたわごとです。心機一転何らかの生きがいを見つけて前向きに生きたいと思っています。

平成31年4月9日のF-35の航空事故

約2年前に米国から航空自衛隊に導入されたばかりの最新鋭ステルス戦闘機F-35が、夜間訓練中青森県三沢沖の海上に墜落し操縦者は脱出することなく死亡しました。覚えている方もおられると思います。日本のF-35としては初めての大事故です。航空事故調査の結果については同年8月9日防衛省から発表されました。しかしブロガーのなかに発表された事故原因について疑問を持たれた方がおられましたので、OBとして感想を述べたいと思います。

自衛隊機の航空事故調査は防衛省が行います。実施方法は防衛省の訓令で定められています。なお民間機については国交省の航空事故調査委員会が行いますので管轄が違います。航空自衛隊の場合、航空事故の現地調査は事故が発生した航空方面隊の幕僚長が中心となって調査グループを編成して現地調査を行います。その結果は現地調査報告書として航空幕僚長に提出します。この現地調査報告書をもとに航空幕僚監部は監察官を中心として航空事故調査を行い、正式の航空事故調査報告書を作成し防衛大臣に報告します。下記に報道機関向けの報告書と大臣に報告した報告書のリンク先を張っておきます。
(調査の手順は記憶に基づく30年以上前のものですが、現在も変わっていないと思います。)


調査結果によると、直接の原因は不明であるが最も可能性が高いのは、空間識失調により自機の姿勢把握ができないまま最短距離で海上に激突したこととなっています。空間識失調は実際に体験した者でないと実感が湧きませんが、空自のパイロットなら誰でも体験しています。自機の姿勢が自分の体感と異なる状態を言います。操縦席から水平線が見えれば自分の体感姿勢の誤りが修正できますが、雲中飛行や夜間飛行で水平線が認識できない場合、計器(姿勢指示器)しか姿勢判定の手段がありません。この計器が信じられなくなる状態を空間識失調と言います。人間の五感というものは、いざというときに全くあてになりません。
また事故調査においては、事故原因を誤魔化すことは絶対にありません。大勢の人が調査に関わるので誤魔化しようがありません。以下は報道機関向けの報告書です。


https://www.mod.go.jp/asdf/news/houdou/H31/20190809.pdf


なお大臣報告用の正式報告書がネット上に掲載されていたので同じくリンクを張っておきます。部内向けなので一般向けの表現になっていません。黒くすみ消しされた部分は個人情報で事故の原因究明には直接関係ない部分です。


http://miyamototooru.info/miyamoto/wp-content/uploads/2019/09/f27314318b667f2b2156d65ea6732c0b.pdf